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潰瘍性大腸炎は低残渣食にすべきなのか?

私が大阪府立成人病センターで潰瘍性大腸炎の診療をしていたとき、何人もの患者さんがほぼ同時期に悪化したことがありました。不思議に思い、患者さんに話を良く聞いてみると、皆さん、保健所の講習会に参加して、そのときに講師の先生から潰瘍性大腸炎の患者さんは低残渣食にするようにとの指導を受けていました。真面目な患者さん達は、その話を信じて、普通の食材も裏ごしするぐらい、徹底して食物繊維を避けた食事をしました。

おそらく、その講演をされた先生は、食物繊維は硬いので、それが大腸粘膜をゴリゴリと傷つけることをイメージされて、そのような話をしたのかもしれませんね。しかし、その当時から、食物繊維を投与する臨床試験の報告はあり、緩解期における再燃予防には食物繊維の投与が良いことも報告されていました。

食物繊維は、人の消化酵素では分解されず、吸収もされませんが、大腸内で腸内細菌により短鎖脂肪酸などに分解され、それが大腸粘膜の重要な栄養源になります。食物繊維を摂取しないと大腸粘膜に栄養が届かないため粘膜の修復が悪くなるのが食物繊維を摂取しなければ潰瘍性大腸炎が悪化する理由と考えています。

急に食物繊維の摂取をやめたために、私の患者さん達は、再燃してしまったようです。食事指導は、なんとなくイメージで話をしてしまうことも多いように思いますが、やはりエビデンスを大切にすべきですね。

その後、国立がん研究センターにおられた佐々木敏先生が、EBN(evidence based nutrition;根拠のある栄養学)を提唱され、現在は、多くの疾患でエビデンスを重視した食事指導がされています。

現在では、食物繊維を大量に含む発芽大麦の摂取が、潰瘍性大腸炎の治療法の一つにまでなっています。

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