2023年3月 の記事一覧です
UCはCDになることがある。しかし、CDはUCにならない
潰瘍性大腸炎(UC)と思って診断していたらクローン病(CD)だったことを経験したことはありませんでしょうか。UCの診断基準は厚労省難病の下記のホームページに「主として粘膜を侵し、びらんや潰瘍を形成する原因不明の大腸のびまん性非特異性炎症」と書かれています。
https://www.nanbyou.or.jp/entry/218
大腸の炎症があり、感染性腸炎やクローン病、放射線照射性大腸炎、薬剤性大腸炎、リンパ濾胞増殖症、虚血性大腸炎、腸型ベーチェットなどが除外されれば、すべて潰瘍性大腸炎になります。実はクローン病であったとしても、診断時にクローン病の特徴的な所見がなければ潰瘍性大腸炎と診断されてしまう可能性があります。その場合、その後の加療中に典型的なクローン病の所見が出てきて、クローン病に診断が変わります。また、この診断基準より、特徴的な所見からクローン病と診断された患者さんが、潰瘍性大腸炎に診断が変わることはありえないですね。
私も、診断時には潰瘍性大腸炎と診断されたものの、その後、クローン病に診断が変わった患者さんを数人経験しています。潰瘍性大腸炎と診断していても、なにか違うような印象(炎症部位が非典型的であったり、リンパ濾胞の炎症が目立ったりするなど)がある患者さんは、潰瘍性大腸炎ではないかもしれない、と常に思いながら、診療にあたっています。
すなわち「潰瘍性大腸炎」には、いろいろな異なった原因で発症した腸炎をまとめた症候群のような病名と思います。私は、現在、潰瘍性大腸炎と診断されている患者さんには、少なくとも5種類以上の原因があると考えています。幼少時期に発症する潰瘍性大腸炎や、最近、増えてきている50歳を過ぎてから発症する潰瘍性大腸炎は、同じ病名がついていますが、全く別の病気なのでしょうね。
潰瘍性大腸炎は、いろいろな原因の病気の集合体のため、治験などでも成績がバラバラになることが多いように思います。論文報告などでも、地域や人種などでおそらく原因の分布が大きく異なるため、内容にばらつきが大きいですね。潰瘍性大腸炎の原因を解明し、原因から病気を再分類しなくては、良い治療法の開発は困難と思います。早い本疾患の原因解明が待たれます。
子供は教えなくても紙を食べる?
人間も動物ですので、生き抜くための本能があります。いつもはあまり美味しいと感じないスポーツドリンクが、お酒を飲んで脱水になったときには、とても美味しく感じることがありますね。人間が生きていくための本能は、思っているよりすごいかもしれません。
昔、高齢のお医者さんから、「子供はお腹に虫がいたら、紙を食べて、虫を出そうとする」という話を聞いたことがあります。誰も教えていないのにすごいなぁ、と思ったことがあったのですが、最近、その話は本当なのかと思い、ネットで調べてみました。犬などでは寄生虫が感染すると泥などを食べる異嗜症(食べ物ではない糞や石、紙などを食べる病気)が出ることがあるようですね。人でも鉤虫症では、異食症を起こすとの記載がありました。
このような本能を上手に活用するのが、病気の治療には重要なのかもしれませんね。