大腸癌の原因はウイルス?
私が若い頃、大腸内視鏡検査をしていると、大腸に腺腫が限局して多発している患者さんを時々認めました。なんとなく、そのポリープは腸管の背部側に多いような感じもあり、腸液の中にウイルスがいて、寝ている時に長時間暴露することによりウイルス性疣贅(いぼ)と同じように腺腫ができたのではないかと大胆な仮説を考えたことがありました。
その頃、私は大阪府立成人病センター(現在の大阪国際がんセンター)の研究所で勤務しており、総長はウイルス発癌でご高名な豊島久真男先生でしたので、豊島先生に相談したところ、ウイルス性を疑うポリープだったら、それを電子顕微鏡で調べて、細胞質内の電顕顆粒(ウイルス粒子ですね)を探すと良いですよ、と教えて頂き、限局的に腺腫が集まっている患者さんがいたら、そのポリープを電子顕微鏡で調べてみました。ウイルス性であれば、角張った顆粒の集簇が見つかるはずだったのですが、残念ながらゴミの様なものが数個見つかる程度で、しばらくしてその研究はあきらめました。
今、考えると、胎生期にAPC遺伝子に変異をおこしたモザイク症例だったのかもしれません。
ただ、大阪大学の宮本誠先生方の研究グループでは、自然発生大腸癌ラットを報告されていて、その原因としてウイルスが有力候補でした。
宮本誠先生の報告資料:
https://cir.nii.ac.jp/crid/1040282256546685184
ラットではウイルスにて大腸癌が発生することがあるのは確実のようですし、人でもウイルスによる大腸発癌があるかもしれません。興味のある先生がおられたら、ぜひともウイルス探しをしてください。