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2022年8月 の記事一覧です

Zelenの方法

皆さんは、「Zelenの方法」をご存じでしょうか。倫理的問題が大きいため、原則として実施してはいけない研究方法ですが、非常に高名な統計学者のZelen先生が、トップジャーナルであるNew Engl J Medで昔、提案した臨床試験の方法です。

一般的な無作為割付試験では、最初に試験内容を説明して同意を得てから無作為に2群に割り付けます。「先呼びかけ・後割付」ですね。

それに対して、Zelenの方法では適格症例に対して、同意を得る前に割付をして新治療になった人のみに参加を呼びかけ、同意を得て新治療を行います。「先割付・後呼びかけ」です。

Zelenの方法

この試験では、新治療を行った患者さんと標準治療群に入った標準治療の集団で比較を行います。臨床の現場の手間としては、単群介入試験を行う場合とほとんど変わらず、簡便に無作為割付試験ができる方法として提案されましたが、現在は、この方法は倫理的問題が大きいため、原則、実施することはできません。

この方法のどこに倫理的問題があるのでしょうか。「標準治療群」に割り付けられた人は、自分が知らないうちに試験の対象者にされて、標準治療の経過を観察されています。自分の情報を自分でコントロールできないことが問題なのです。

よく似た研究方法にヒストリカル・コントロールを比較対照にする研究があります。この方法でも、ヒストリカル・コントロールになる集団からの情報は、研究開始時点までの情報しか使うことはできません。研究開始後の情報も収集したいのであれば、その集団からも同意を得る必要があることに注意しましょう。

発疹は「はっしん」、「ほっしん」?

最近、サル痘のニュースをテレビでよく観ますね。そのとき、発疹を「はっしん」と発言するアナウンサーと「ほっしん」と発言するアナウンサーがいることに気がつきました。NHKでは「はっしん」と読んでいるようですね。医師は「ほっしん」と言っていることがほとんどと思い、ネットで調べてみました。

「放送で標準とする読み方例」(日本新聞協会新聞用語懇談会『新聞用語集2007年版』)によると、①ハッシン、②ホッシン(学術用語集で「医学編」では「ハッシン」。「発疹チフス」は「ホッシン~」)と記されていました。また、『NHK日本語発音アクセント新辞典』(2016年)では、「ハッシン」(許容 ホッシン)となっていました。

NHKの委員が書いた記事では、「伝統的な読み方では、大正3年(1914年)の辞書『辞海』では『ハッシン』とあり、実は『ホッシン』のほうが新しい。『発作(ホッサ)』と混同して『発疹(ハッシン)』も『ホッシン』と読むようになったのではないだろうか?平成6年(1994年)に行ったNHKの調査では、『ハッシン』=50%:『ホッシン』=47%だったが、その後『ホッシン』は増えているようだ。」とありました。

どちらでもよさそうですね。ただ、医療関係者は「ほっしん」と言う人が多いと思います。

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