特定臨床研究における多施設共同研究について
特定臨床研究における多施設共同研究は、これまでの倫理指針と異なる運用になるため、ちょっとしつこいですが、もう一度、このテーマを取り上げます。
プロトコールを改定して認定臨床研究審査委員会(CRB)にて承認されても、jRCTで改定内容が公開されるまでは、施設管理者の承認を得られている施設も含め旧プロトコールで試験を実施することになります。
もしも、新プロトコールの承認が得られていない施設の存在する時点で、jRCTにて改定を公開すると、承認の得られていない施設は旧プロトコールでの試験もできなくなりますので、注意が必要です。CRBで改定が承認後、すべての医療機関の管理者の承認を得てから、その承認結果と改定内容をjRCTで公開して、全施設が同時に新プロトコールに移行するのが望ましいと思います。
ただし、抜け道もあります。2019年11月13日の厚労省からの臨床研究法Q&Aの「問2-4」において「実施中の多施設共同研究を円滑に進める観点から、例えば、他の実施医療機関の管理者の変更等、自施設における臨床研究の実施に与える影響が乏しい研究計画書の変更に係る実施医療機関の管理者の承認については、各実施医療機関においてあらかじめ定めた手続に基づき事後的に行うこととするなど、可能な限り柔軟に対応することとして差し支えないか。」は「差し支えない。」と回答されています。このように柔軟に対応することも可能なので、その医療機関への影響が乏しいと考える改定であれば、その医療機関は後日に承認を得ることとして、その医療機関の管理者の許可がなくてもjRCTには「承認」として公開することも可能なのですね。その場合も、事後に管理者の許可は必ず取るようにしましょう。
これまでの医学系倫理指針では、各施設の倫理審査委員会(IRB)でプロトコールの改定が承認された場合、その施設においては新プロトコールで試験が実施され、旧プロトコールのみIRBと施設で承認された施設では旧プロトコールで試験が実施されて、複数のバージョンが同時に実施される状況が起こり得ましたが、特定臨床研究ではそのような複数のバージョンで試験が同時に行われることは起こりえないため、ご注意ください。