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2022年10月 の記事一覧です

ハザード比とリスク比の違い

リスク比やオッズ比と同じく、臨床試験でよく出てくる値に「ハザード比」があります。「ハザード比」と「リスク比」はどこが違うのでしょうか。

「リスク比」はある期間全体でのイベントの有無の情報を用いてイベント発生割合を比較しますが、「ハザード比」はいつイベントが起こったのかの時間(期間)の情報も用いて、「単位時間あたりのイベント発生率」を比較します。

生存時間などでカプランマイヤー曲線を描いたときによく用いるログランク検定ではハザード比は出ません。ハザード比を出すためにはCox比例ハザードモデル(Cox回帰)で計算する必要があります。

「30日以内」は、過去?未来?

プロトコールなどで「登録日の30日以内に心電図を測定すること」と書かれていることがあります。その場合、例えば、登録日が7月1日であれば「30日以内」は「6月1日~7月31日」なのか「6月1日~7月1日」なのか、迷うことがあります。登録の条件に「心電図で異常がないこと」と書かれていれば「6月1日~7月1日」のことなのだと思われますが、条件になっていなければ、「6月1日~7月31日」と思うこともできますね。

そのような混乱を避けるためには「登録日より過去30日以内に」と記載する必要があります。なお、「登録日より30日以前に」と記すと「5月31日より過去に」という意味に取られますので気をつけましょう。

30%減少とは?

ニュースなどで、「患者数30%減に」「患者数30%に減」などの記載を見ることがあります。この場合、最初の書き方であれば100人いた患者さんが30%減って70人になった、後の書き方であれば100人いた患者さんが30%の30人になった、という意味になりますね。紛らわしいです。記事によっては、わざと勘違いさせようとしていると思ってしまうような書き方をしているものもありますね。「患者数が減って30%になった」「患者数が30%減って70%になった」というように誤解されないよう丁寧に書いてほしいですね。

 

オッズ比

リスク比に似た指標にオッズ比(odds ratio:OR)があります。これも日本疫学会が出している「疫学用語の基礎知識」では下記のように書かれています。

「オッズとは、「見込み」のことで、ある事象が起きる確率pの、その事象が起きない確率(1 − p)に対する比を意味する。オッズ比とは二つのオッズの比のことであり、コホート研究での累積罹患率(罹患率)のオッズ比と、症例対照研究での曝露率のオッズ比がある。前者は曝露群と非曝露群それぞれの罹患/非罹患オッズの比であり、後者は罹患率と非罹患率それぞれの曝露/非曝露オッズの比である。」「症例対照研究の場合、相対危険と寄与危険を直接計算することはできないが、①患者群・対象群が母集団を代表していること、②疾病の発症率が低いこと、などが成り立つとき、オッズ比により相対危険の近似式として用いる。」多変量解析のロジスティック回帰分析では、結果はリスク比ではなく、オッズ比で出ることに注意が必要ですね。

オッズ比を示すときには「○○倍になった」と言ってはいけないことも注意しましょう。

オッズ比とリスク比については、下記のホームページ内の新谷先生の解説動画がとてもわかりやすいので参考にして下さい。

https://haru-reha.com/risk-odds/

RRは何の略?

論文を読むと結果を示す表にRRと書かれていることがありますね。これは何を指しているのでしょうか。結果を示すところに書かれているRRには下記の2種類があります。

・相対危険度(relative risk:RR)

・リスク比(risk ratio: RR)

日本疫学会が出している「疫学用語の基礎知識」では下記のように書かれています。

「危険因子に曝露した群の罹患リスク(危険)の、曝露していない群の罹患リスクに対する比で示される。リスク比ともいう。すなわち、「危険因子に曝露した場合、それに曝露しなかった場合に比べて何倍疾病に罹りやすくなるか(疾病罹患と危険因子曝露との関連の強さ)」を示す。疫学の要因分析で重要な指標である。」すなわち、相対危険度とリスク比は同じですね。

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