一次予防と二次予防
皆さんは、「癌の一次予防」や「癌の二次予防」という言葉を聞いたことがありますでしょうか。「癌の一次予防」は「発癌を予防する」、「癌の二次予防」は「癌死を予防する」ことを指します。
癌の二次予防の代表は「早期発見・早期治療」の検診ですね。ただ、より良い手術や化学療法を開発することも癌死を防ぐためなので、二次予防に含まれると私は考えています。
それに対して、「癌の一次予防」は、禁煙対策やピロリ菌や肝炎ウイルスの対策、そして薬で発癌を予防する「化学予防」などがあります。それぞれの予防法の開発は大切ですが、癌にならない研究が特に重要と思っています。病気にはならないことが一番ですよね。
ただ、検診では、「早く癌が見つかって良かった」と患者さんには感謝されますが、頑張って禁煙指導しても、「うるさいなぁ」とか「喫煙しても癌にならない人も多いし、私もならないと思う」とか思われることも多いですし、もしも禁煙が成功しても、その後、癌になったら「言われたとおりに禁煙したのに癌になってしまった!」と怒られることもあるので、一次予防の方が、医師としては辛いですね。
私は、大腸腺腫や子宮頸部の異型上皮などの前癌病変を摘除することも「癌の一次予防」に含めていますが、「1.5次予防」と称している人もいます。
なお、虚血性心疾患の分野でも「一次予防」「二次予防」という言葉を使うことがありますが、意味が違うので注意が必要です。虚血性心疾患における「一次予防」は「一般集団における発症予防」、「二次予防」は「一度、発症した人の2回目の発症予防」を指します。循環器の先生と話をする時には気をつける必要がありますね。
誤解を避けるために、私はなるべく「一次予防」、「二次予防」という言葉は使わず、「発癌を予防する」「癌死を予防する」というように、具体的に予防の目的を記すようにしています。