預け金
国から支給される研究費の多くは3月までに予算を使い、余った分は国に返金します。文科省の研究費の一部では、3月の時点で使わなかった予算は次年度へ持ち越しが可能なこともありますが、これはかなり例外的な取り扱いになります。
年度末に余った研究費を国に返金したくないため、業者にお金を預けて次年度以降にそのお金を使うことを「預け金」と言い、犯罪です。これをする場合、国の予算はその年度で使うことが必要ですので、見かけ上は予算を使った形にする必要があり、架空の発注をして予算が執行されたようにしてお金を業者に渡します。架空の領収書が出されている時点で、すでに犯罪ですね。業者はその預かったお金の記録を裏台帳に記して、次年度に研究者が希望する物品をその裏台帳から支出して渡すのが「預け金処理」です。
これをするためには、架空の発注や領収書、請求書などが必要になりますので、しつこいようですが、それをした時点で犯罪です。研究に必要なものを次年度以降に執行しても、この行為自体が犯罪ですので、絶対にしてはいけません。
ただ、年度をまたぐ研究の場合、判断が難しい場合もあります。年度単位での予算執行を極端に考えると、その年度に購入した試薬などは年度をまたがずに3月末で廃棄しなくてはならない、動物実験で飼っていたラット・マウスも年度末にすべて屠殺しなくてはならない、などという馬鹿げた話にもなりかねません。
現在、多くの介入試験では臨床研究保険への加入が義務づけられていますが、複数年におよぶ長期間の試験であっても、保険会社の見積もりは試験全体で行われ、保険の掛け金は試験開始時に支払うように指示されることが多いです。ただ、複数年度の保険の掛け金を、その年度の予算で支払うことについては、当局から問題点を指摘されて、保険会社と交渉が必要になることもあります。
家を建てる時などは、完成して引き渡される時だけでなく、最初の時には手付け金、途中でも数回に分けて建築費を支払うのが一般的です。長期間にわたる大きな研究プロジェクトなどでは、単年度ではなくプロジェクト全体に予算がつくようにする必要があるように思います。毎年の予算執行の管理は必要と思いますが、研究者が研究に集中できるように、できるだけ使いやすい方法を考えてほしいですね。