前向き研究と後ろ向き研究
多くの研究で、研究タイトルに前向き(prospective)や後ろ向き(retrospective)という単語がついていますが、「後ろ向き」については、かなり混乱しているように思っていました。「ICR臨床研究入門」の口羽文先生の「観察研究・レトロ研究1」のE-ラーニングにとてもわかりやすくその混乱の理由を説明されていましたので紹介します。
口羽文先生の講義では、定義は下記のように2つあるとのことです。
定義1: 曝露とイベント発生の記録の時間的順序
- 前向き: 曝露 → イベント
- 後ろ向き: イベント → 曝露
定義2: 研究開始時点とデータが発生する期間の時間的順序
- 前向き: これから発生するイベントと収集する
- 後ろ向き: 既存資料を用いた研究
カルテの記録を基にしたいわゆる‘レトロな研究’は定義1では前向き研究,定義2では後ろ向き研究になる、とのことです。
私が考える定義は、口羽文先生の「定義1」でした。科学用語に2種類の定義があるのは、混乱を招くだけですので、これは早く整理すべきですね。
私は、定義1にすべきと考えています。定義1では、観察研究においてコホート研究は前向き研究、症例対照研究は後ろ向き研究を示しており、既存資料を用いたコホート研究は「既存資料を用いたコホート研究」と称すればわかりやすいと思います。
なお、介入試験で、「前向き介入試験」と記されていることがありますが、「介入試験」はすべて「前向き研究」ですので、わざわざ「前向き」と書く必要はないと思っています。