目的及び意義

臨床研究によって新しい治療法を確立することは医療研究機関の使命で、患者さまのご協力があって成し遂げることができるものです。

今回、参加をお願いする臨床研究は、日本医療研究開発機構が行う革新的がん医療実用化研究事業として、研究者が委託を受けて行う臨床試験です。

製薬会社が行う新薬の安全性・有用性を調べ、日本医療研究開発機構の承認を得るための治験ではありません。

あなたのご病気である家族性大腸腺腫症は、若い時から大腸にたくさんの腺腫(良性の腫瘍)が発生し、その腺腫が大きくなり20歳頃から腺腫内にがんが発生する病気です。

これまでは、この病気と診断された場合は20歳前後で大腸のほとんどを切除するのが唯一の治療法でしたが、大腸内視鏡検査の進歩にともない、大腸を手術せずに、ポリープを内視鏡的に摘除して発がんを予防する試み(J-FAPP Study III)が行われるようになってきました。

現在、あなたはそのJ-FAPP Study IIIに参加されて、定期的に大腸内視鏡検査にてポリープを摘除しています。

ただ、大腸内視鏡検査でポリープを摘除するだけでは、ポリープを完全に無くすことはなかなかできません。

そこで、私達は、薬でポリープを縮小する研究も行ってきました。

最近、いくつかの臨床試験でアスピリンが大腸ポリープの発生を抑制することがわかってきました。

家族性大腸腺腫症に対しても臨床試験により低用量アスピリンは大腸ポリープを縮小する可能性がわかりました。

ただ、その効果はあまり強くなく、また、手術をされた患者さまでは、吻合部に潰瘍ができたことも経験しました。

家族性大腸腺腫症で潰瘍性大腸炎を合併した患者さま4名を対象に潰瘍性大腸炎の治療薬であるメサラジン(商品名:ペンタサ®)を投与したところ、大腸ポリープが縮小、減少する傾向を認めました。

そこで、潰瘍性大腸炎を合併していない家族性大腸腺腫症患者さま6人に半年間メサラジンを服用していただきましたところ、大きな問題もなく服用でき、大腸ポリープは減少する傾向がありました。

アスピリンとメサラジンは、ともに炎症を抑える薬ですが、その作用機序は少し異なります。

よって、これらの薬を組み合わせることにより、大腸ポリープを減少させることができないかと考え、本試験を行うことにしました。

本試験の目的を十分に理解して、本試験に参加して頂けましたら幸いです。