
早期胃がんに対するESDは画期的な治療で、20世紀後半から21世紀初頭にかけて爆発的に普及しました。2006年には保険収載もされ、今では一般的治療となっています。また、胃癌治療ガイドライン第5版では、ESDによる切除であれば「適応拡大病変」も「絶対適応病変」となる予定です。
一方で、ヘリコバクター・ピロリ感染の関係から胃がん罹患患者の高齢化は避けられません。つまり、合併症を有した患者に対するESDが今まで以上に増加することが予想されます。合併症の中でも、冠動脈ステント留置後や再発予防目的に抗血小板薬を服用している患者は増加傾向にあります。抗血栓薬服用者に対する消化器内視鏡診療ガイドラインが示されていますが、本邦からのエビデンスは多くありません。
世界をリードする本邦の消化管がんに対する内視鏡治療、特に胃ESDに関するエビデンスを他国に託すわけにはいきません。また、日本からしか示すことはできないと思っています。様々な抗血小板薬がある中で,低容量アスピリンは基本中の基本薬剤です。まずは、この薬剤使用下での胃ESDの安全性を示す必要があると考えSETUP trialを推進しております。
日本のESDの技術力と全国で協力し合う総合力で、安心と安全のエビデンスを示すことができれば、そこにはさらなるチャンスが生まれてくるものと思っています。
皆様のご協力に感謝申し上げます。引き続きよろしくお願いいたします。

後藤田先生と一緒に、SET-UP試験の事務局を担当させていただいております。本試験は2012年に内視鏡学会から「抗血栓薬服用者に対する消化器内視鏡診療ガイドライン」が発刊されたことがきっかけとなっています。それまでは出血の危惧から、内視鏡処置の前後で抗血栓薬は中止することが基本となっていました。しかし、同ガイドラインでは血栓症の危険性の方を重視し、なるべく中止しない方向に大きく方針が変更されました。胃ESDにおいてもアスピリンを継続下に行うと出血が増えるのか、あまり変わらないのかという素朴な疑問に対する明確なエビデンスはありません。このように、大きな方針の変更にあたっても示されているエビデンス・レベルは必ずしも高くはなく、限られたデータと専門医の意見によって実臨床の指針が提唱されているというのが実情でした。抗血栓薬服用例や、処置後の出血例は症例数が限られますので、明確な成績を示すためにはどうしても大規模な臨床試験が必要となります。
本邦の内視鏡レベルは世界的に見ても高水準で、大都市のみならず地方においても高レベルの内視鏡診療が行われています。このような実臨床の診療成績を世界に向けて発信できるエビデンスとして構築し、多くの患者さんの転帰の改善に役立てることができればと思っています。本試験が今後の国内の臨床研究のよいプラットフォームとなることを祈念いたしております。

本試験のデータセンターの管理を担当しています
京都府立医科大学分子標的癌予防医学の石川秀樹です。
私どものデータセンターは京都府立医科大学分子標的癌予防医学大阪研究室内に置かれ、関係省庁のガイドライン等に従い、本試験のデータマネジメント及び中央モニタリングを実施しています。
本試験が成功しますよう、データセンターとしても最大限の対応をさせて頂きます。
ご不明な点がありましたら、遠慮なくご連絡ください。
- 顧問
- 藤本 一眞佐賀大学医学部
- 独立安全性評価委員
- 吉田 茂昭青森県立中央病院
- 松井 敏幸福岡大学筑紫病院
- 上西 紀夫公立昭和病院
- 佐野 武がん研有明病院
